はじめに
今回から僕の仕事である『リハビリテーション』に関わる知識・技術などについて紹介していきたいと思います。
闘病ブログもそうですが、自分に何ができるか考えた時にやってみたいと考えていたものです。
今の医学界は学校教育はある程度は統一されていますが、結局は勤めてから何を学んでいくかによって同じ医療職種でも専門性が分かれ、患者さまとの関わり方も異なっていると感じます。
今回から紹介していく内容も偏った考え・知識があるかもしれませんが、これも考え方の1つとして捉えながら見てください。
興味があれば自分から学びます。
そのきっかけにでもなればと思っています。
内容はこれまでに僕が勉強会や新人教育などで作ってきたパワーポイントの資料を元に作成しています。
それではよろしくお願いします。
リハビリテーションの基本的な考え方
以前、上記(生活を支える高次脳機能リハビリテーション)の著者である橋本圭司先生(リハビリテーション専門医)の研修会に参加した際にも説明されていて非常にわかりやすいと思ったスライドの一つです。
橋本先生は「一番言いたいのはここかもしれません」と話されていました。
僕もこの図の通り、身体や認知面を良くしたいなら難しい専門家でなくても可能だと思います。
今回から文献や研修会資料や専門的な研究などから推奨されていることを紹介していきますが、原則はこのピラミッドのように人間の体はできていると考えます。
例えるのであれば、風邪ひいているのに頭は働かないですよね!
眠いのに動けと言われても無理です!
図の一番上に『高次脳機能』と書いてありますが、これは脳の機能を指すので認知症も含まれます。
したがって、後に紹介しますが認知症も普段からピラミッドでいう底辺部分にある運動や循環を整えていたら予防できるということになります。
どんな名医がいても本人の気持ちがついていっていないと身体はなかなか良くなりません。
『健康意識』という本人の気持ちの方が大切だったりもします。
これをいかにはっぱかけて本人が自分で考え、行動してもらうことが一番大切だと考えています。
それを専門的な視点からサポートさせていただくのが、我々リハビリテーション専門職の仕事だと思っています。
日本(北海道)の現状と健康寿命
ちょっと話が変わります。
最初に大きく日本の概要を話させていただきますが、 日本の総人口は今あたりの時期をピークに今後少なくなっていきます。
推計では2046年には1億人を下回るとされています。
後25年くらいです。
世界の中でも圧倒的に速いスピードで日本の少子高齢化が進みます。
このことから日本は他国を真似ることもできず、日本が今後どのように対応するか世界中から注目されています。
右上の図ですが、1965年には胴上げ型として高齢者ひとりに対し、9人くらいで支えていましたが、最近は騎馬戦型と言われ、3人に1人くらいとされています。
そしてこのままいくと、2055年には高齢化率が40.6%に達し、1人に対し1人の高齢者を支える時代が来るのではないかと推定されています。
ちなみに、日本に対して世界で見るとは1分に137人が産まれています。
世界中で1年で約6000万人が亡くなりますが、逆に1億人が産まれますので世界で見ると人口は増えています。
日本は少子化にもっと早く手を打っておくべきでしたね(-_-;)
日本では人口減少しているので、もちろん支える側の人として今後は医療・介護の分野で働く人の数も減少していくとも想定されます。
これに対してAIやロボットなど機械の導入も増えていくでしょうが、人の手が足りなくなるのは間違いないと思われます。
人の手が足りなくなるということは、関わり方も変わっていく可能性もあるということです。
手厚いマンツーマンのリハビリの方法も変わっていく可能性もありますし、現在でもすでにリハビリを受けたくても対象にならないリハビリ難民の方もいらっしゃいます。
これに対して予防医学・介護予防の分野へのリハビリ職の関わりも増えていますが、やはり基本となるのは本人の健康意識を高めることになります。
そこで大事になってくるのが、『健康寿命』です。
健康寿命とは日常生活に制限のない期間、自分の生きたいように生きていれる期間のこと、言いかえれば住み慣れた町で自分らしく生きていれる期間という事になります。
この健康寿命をいかにして伸ばすかということは非常に重要なリハビリテーションのテーマにもなります。
上記の図は、平均寿命と健康寿命の差を表した図です。
男性が健康寿命が70歳、女性が73歳に対し、平均寿命との差が男性は79歳なので9年、女性は86歳なので12年という期間の間は日常生活になんらかの制限があるという結果になっています。
そして、僕の住んでいる北海道は平均寿命が低いです。
男性が全国で48都道府県中32位、女性が34位という結果になっていました。
北海道が全国に比べて健康寿命が短いのは、長い冬の間、室内で過ごす時間が多くなったり、通院が雪の影響で難しい場合に入院する事で、体を動かす機会が減ることによる影響があるとの見解もありますが、詳しい因果関係ははっきりとはわかっていません。
高齢者の目標とリハビリテーション
リハビリテーションで関わる方の多くは高齢者となっています。
ちょっと古いですが、高齢者の健康に関して政府があげていた目標としてこういったものもありました。
2012年に策定された健康日本21(第2次)では『高齢者の健康』について設定していました。
増え続ける介護サービスの抑制としては予防医学、介護予防を。
認知症は認知症の前段階とされている軽度認知障害(MCI)の把握、地域活動の推進、認知症に強い町作りを。
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)は認知度の増加を図り、身体機能低下の予防を。
低栄養に関してはBMI20以下の割合は疾病や老化などの影響を受けて65歳以降も年齢があがるにつれて増加しますが、その増加の抑制を。
足腰の痛みに関しても自然発生は避けられませんが、予防医学でその割合を減らす。
社会参加では1998年は男性48.3%、女性39.7%でしたが、2008年には男性64%、女性55.1%と増加しています。
今後も少子高齢化を背景として高齢者への労働力への期待も高まっていく事でしょう。
そういった中、リハビリテーションの関わりも時代に合わせて変化してきました。
未だに多くの方が理解されていませんが、決して運動する事だけがリハビリテーションではありません。
リハビリテーションの概念はもっと広いものです。
単なる機能回復ではなく、心身に障害をもった方が最適かつより良い人生を歩めるように行われるすべての行為がリハビリテーションです。
現在では予防医学に加え、高齢者のリハビリテーションのイメージとしては上記図のようなイメージになっていると思います。
アプローチを大きく分けると『心身機能』『活動』『参加』への関わりとなっています。
時間軸で見ると、急性期・回復期は心身機能へのアプローチが多いですが、生活期には心身機能よりも活動や参加といった部分が多くを占めています。
しかし、だからといって生活期も心身機能をおろそかにするということにはならないように注意をしてほしいと思っています。
冒頭でも言いましたが、やはり人間の体はピラミッドの様にあると考えます。
僕が関わった患者さまの中には、生活期でも心身機能のリハビリテーションを必要としている障害像が重い人がたくさんいました。
やはり心身機能と活動・参加は簡単に分けられるものではありません。
人の生活に関わるという事はそう単純なものではないのです。
また、アプローチを考える上では、例えば回復期でリハ医から理学療法士に関節可動域訓練や筋力訓練や歩行訓練、作業療法士に整容動作訓練や食事動作訓練、言語聴覚士に摂食・嚥下訓練といった、主に心身機能訓練中心のオーダーがあったとします。
訓練内容としては、それを優先的にリハビリテーションで行うべきと関わるチームでも判断するなら本人に同意を得て実施していくべきだとは思います。
しかし、考えなければいけないのは『なぜそのアプローチが必要なのか?』『それ(心身機能訓練)を実施する事でどのような生活(活動・参加)を目指すのか?』そして何より大切なのは『当事者の立場になって考える事』です。
単純に訓練オーダーがあったからといってそのまま実施しないで下さい。
きちんとその人に向き合って関わって下さい。
これから関わる若手の方はリハビリ専門職として限られた時間の中で1週間・1か月・そして1日の中でどのくらいの割合を何に向けるか、そして効率の良い順番や方法を考えたうえで実施できるようになって欲しいと切に願います。
そもそもリハビリテーションが時間単価の診療報酬になっているのはおかしいと僕は思っていますが、関われる時間は有限です。
一方で時代に合わせてこれから関わり方も変わるかもしれません。
ですが、どんな時でも、もし自分や自分の大事な人がリハビリテーションを受ける事になったら「何から始めたらたら良いか?」「仕事復帰はどうしたらできるのか?」など色々な事を考えると思います。
どんな環境になっても考えずに流れ作業でなんか絶対にやらないはずです。
なので考え方は変わらないと思います。
そうして相手の事を想って考えて接していく事が光ある未来(可能性)に繋がるのだと信じています。
人間の本質は『光』です。
自分が患者の立場になってよくわかりましたが、先が見えない暗闇の中でいつも希望という光を探していました。
一緒にその光を探したら良いと思います٩(>ω<*)و
よく新人さんが何から学んだら良いかわからないと聞きます。
それに対して僕は、『患者さんから学んで下さい』と答えています。
決して関わり方に正解はないのかもしれませんが、考えていく事で正解に近いものにはなると思います。
話は長くなりましたが、僕はこのように考えてリハビリを実施しています。
では、次回からこれまでに自分が大事だと思って学んできた事を紹介していきたいと思います。